オアハカはどんな町?
メキシコの都市オアハカは、アメリカの旅行雑誌 『Travel + Leisure(トラベル・アンド・レジャー)』の観光都市ランキング「World's Best Awards」 で二年連続第一位に輝くほど人気の都市です。
本記事は実際にオアハカを訪れた筆者が、先住民族や手工芸品、伝統料理など魅力が詰まっているオアハカについてまとめています。オアハカ観光を考えている、訪れる前にどんな町か知りたい、という方は是非参考にしてみてください。
1.概要
a) 歴史
オアハカでは16の先住民グループが独自の言語、習慣、伝統を持ち、数世紀にわたって多様な文化が受け継がれています。
歴史はアステカのワクシャカク集落で1529年にスペイン人が町を建設したところから始まります。紀元前1500年から500年にかけては、サポテカの都市でモンテ・アルバン遺跡が繁栄しました。アステカの影響もありつつも、オアハカは独自の文明・文化を形成したのです。1987年にモンテ・アルバン遺跡は世界遺産に登録されています。
18世紀にはコチニール(昆虫から作られる赤い染料)と織物の輸出によって都市を豊かにしました。最近は先住民コミュニティの芸術や工芸品が注目を集めています。
近年ではテキスタイルや陶器の生産も盛んで、特にオアハカの郊外に位置するテオティトランデルバジェでは伝統的な技法で美しい作品が生まれています。オアハカ先住民の長きにわたる歴史と伝統は今日まで継承されていて、現地では工芸品や遺跡からそれらを体感することができます。
b) 場所
メキシコ南部に位置し、メキシコシティから飛行機で1時間またはバスで7時間で行くことができます。グアダラハラからは飛行機は1時間半ほどの直行便が出ていますが、バスはメキシコシティで乗り換えが必要で、トータル15時間ほどかかります。
c) 気候
乾季と雨季に分かれますが、一年を通して温暖で乾いた天気が特徴です。ただ、朝晩は気温が下がることが多いため、夏服に加えてカーディガンやセーターが必須。平均気温は高めですが、湿気が少ないため日本のようなジメジメ感はなく過ごしやすい気候です。
月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
最高気温 | 26°C | 28°C | 29°C | 31°C | 30°C | 27°C | 26°C | 26°C | 26°C | 26°C | 26°C | 26°C |
平均気温 | 17°C | 19°C | 21°C | 21°C | 22°C | 21°C | 20°C | 20°C | 20°C | 19°C | 18°C | 17°C |
最低気温 | 9°C | 10°C | 12°C | 14°C | 16°C | 16°C | 15°C | 15°C | 15°C | 13°C | 11°C | 9°C |
2.先住民族
オアハカには現在もサポテカ族、ミシュテカ族、ズンビ族、チャティノ族など、16の先住民が存在し、州人口の約4割を占めています。
そして、これらの先住民族はオアハカ市内や周辺地域で独自の言語、習慣、芸術、宗教を継承し続けています。そのため、オアハカでは多様な文化や人々が交わり、市内も食文化や祭りなどの点で影響を受けています。つまり、オアハカで多くの人がメインで観光するであろう市内は、多種多様な民族の優れた工芸品やアートが集まっているのです。
また、オアハカ郊外でも先住民の村々が現存し、それぞれが特徴を持った巧な民芸品を作っているため、複数の村を訪問できるツアーも存在します。ツアーには考古学好きにはたまらない重要な遺跡巡りも組み込まれていることが多いため、メキシコの歴史の理解を深めたい方にもおすすめです。
3.観光
オアハカにはオアハカ歴史地区とモンテ・アルバンの古代遺跡という二つの世界遺産があり、どちらも見どころ満載で魅力が詰まっている場所です!その他にもメキシコ国内外から訪れる人が多い、人気の観光地を紹介していきます。
a) オアハカ歴史地区(中心街)
オアハカのの中心街はすべての場所を歩いて見て回れるほどコンパクトで、そのカラフルで芸術的な街並みに市場や美術館、壁画などの観光スポットが集結しています。また、雑貨やお洒落なカフェなどが並んでいるため、ただ散策するだけでも飽きずに楽しめます。
アバストス市場
別名「セントラル・デ・アバストス」はオアハカ最大の市場で、市内にとどまらず州全体の人々の交流の場所となっています。オアハカはメキシコ人から食の都と称されるほど料理に定評があり、市場ではローカルなオアハカ料理を堪能することができます。
また、料理以外にも民芸品や格安の衣類、雑貨や生花など全てのものが揃っていてかなりカオスな空間となっています。
べインテ・デ・ノビエンブレ市場
ローカル感満載で安くて美味しいオアハカ料理を求めている方は、「20 de Noviembre市場」に訪れましょう。朝の7時から開かれているため、軽めの朝食にもぴったりです。モーレ料理、トラジューダ、ガルナチャス、メメラスなどオアハカの伝統料理を堪能できます。
民芸品市場
衣類、生活品、雑貨類、小物などが揃っているお土産探しにうってつけの市場です。特にオアハカの先住民族の刺繍服や伝統工芸品は見ているだけでも楽しい華やかさがあります。また、現地の人々も訪れる市場であるため、見たこともないような調理器具やメキシコ特有の生活品が置かれています。
ベニート・フアレス市場
刺繍服や民芸品、小物類や特産品が販売されている市場です。アバストス市場と似ていますが比較的に価格帯が少し高く、地元の人向けというよりは観光客向けに販売している雰囲気があります。他の市場と比べると雑踏した感じはあまりないため、効率的にお土産を探し回ることができるかもしれません。
オアハカ繊維博物館
中心部に位置する、テキスタイルアートに特化した博物館です。ここでは、展示スペース、メインパティオ、ショップを巡りながら、テキスタイルの美しさと歴史を体験できます。入場制限があり、事前に予約と待機が必要な点には注意してください。
民族植物園
庭園には2億3,000万年以上前に存在したと言われるサイカスの植物などオアハカ固有の種からなる植物が植えられています。また、オアハカの芸術家フランシスコ・トレドとルイス・サラテによってデザインされた噴水・彫刻や、サント・ドミンゴ修道院の石灰窯や陶器窯、修道士の日常生活を偲ばせる洗濯機などが展示も見どころです。
全長6Mにも及ぶサボテンの林や巨大サボテン、先住民の儀式に使われる香木など、オアハカ文化を感じさせるフォトジェニックな場所にもなっています。
b) モンテ・アルバンの古代遺跡
メキシコのオアハカに位置するモンテ・アルバン遺跡は、サポテカ文明が栄えた古代都市です。この遺跡は、紀元前500年から100年ごろに建設が始まり、紀元800年まで約1,300年にわたりました。モンテアルバンはスペイン征服者がイタリアのアルバーノ産山地に似ていることから名付けたものです。
モンテ・アルバンは、その壮大な都市計画と建築様式で知られ、広大で平坦な広場やピラミッド、神殿、祭壇などが特徴です。この遺跡では、古代サポテカ文明の高度な天文学的観測所も見られ、星空を観察し続けた彼らの知識と技術を垣間見ることができます。
遺跡内には、石碑に刻まれた裸婦像があり、これらの彫刻はかつての生け贄の様子を描いていると考えられています。また、図形や文字からは、遺跡内での暦の使用や歴史的な出来事の記録も示唆されています。
遺跡内には小さな博物館があり、サポテカ文明の歴史と文化を体験することができます。オアハカ市内から車で30分ほどのところにあり、ツアーも多く行われています。
c) 先住民村
オアハカ料理や民芸品が好き、様々な文化が交差しながら継承されてきたオアハカの伝統のルーツを知りたいという方はぜひ先住民村に訪れてみてください。
スペイン侵攻後もなお受け継がれてきた伝統手法を用いて作られた作品はとても美しく、見ていてその繊細さに感動するほどです。また、村に訪れることでその村が独自に形成した宗教文化や習慣を体感することができ、より深い作品への理解に繋がります。
テオティトラン・デル・バジェ
オアハカ市から車で東に45分走らせた先には、「タぺテ」と呼ばれる織物で有名な村があります。メキシコで最も有名な織物生産地の一つであり、テオティトラン・デル・バジェを生産の中心地にして全国のアパレルショップで販売されています。
中でも人気の高いラグのデザインは先祖であるサポテカ族のシンボル、パターン、土地の雰囲気に触発されて作られているため、オアハカでしか見つけられない個性的なラグを見つけることができます。
サン・マルティン・ティルカヘテ
オアハカ市から車で南に45分行くと、「アリブリヘ」の中心地として名を馳せているサン・マルティン・ティルカヘテがあります。アリブリヘとは、神聖なコパルの木から作られた置物で、カラフルなデザインと不思議な模様が特徴的です。
街の中には多くの制作スタジオがあり、観光客向けのワークショップや後継者に対するプログラムが行われています。また、ワークショップはコパルと地域の持続可能性にも焦点をあて、先住民の土地と伝統を保護しながらコパルを保存・入植しています。
サン・マルコス・トラパゾラ
オアハカ市から車で1時間弱のところには、昔ながらの工芸品である「バロロホ」で有名な村があります。バロロホは赤い粘土の陶器で、丘陵地帯で採掘された粘土から作られています。
村の女性はほとんどが熟練した陶芸家であり、ろくろを使わずに作品を作り上げます。バロロホはメキシコ全土で日用品として使用されており、台所用品や食器として使われることがほとんどですが、この村では女性が自ら採掘した粘土で花瓶や装飾品が作られています。
4.祭り
オアハカは死者の日に最も盛り上がりを見せる街としても有名で、毎年多くの観光客が訪れています。また、毎年7月にはラテンアメリカ最大規模の民族舞踊の祭典、「ゲラゲッツア(Guelaguetza)」が開催されます。ぜひ一度訪れてその規模と熱量を体感してみてください。